その一筋の涙を目の当たりにして、僕はようやく自分を止めることができた。



「…ごめん……」

「う、ううん。私も…ごめん。私と雅人も行けばよかった。夏休みなんだから、友達とか…お父さんとか…お母さん……っ…」



それ以上、千亜紀は言葉を続けることができず声を殺して泣き始めた。

僕は立ち上がって千亜紀のそばにゆっくりと歩み寄り、そして、優しく抱きしめた。



「ごめん、言い過ぎた。千亜紀が謝ることなんてない」

「…でも…」

「最初はこんなもんだよ。もっと良い曲作って、もっといろんな人に聞いてもらって、いつかきっと、成功させてみせるから」

「…涼ちゃん…」



顔をうずめるようにして泣いていた千亜紀が顔を上げ、僕の顔を見つめる。


まだ中学生の、妹のような千亜紀。

なぜ僕は、ただ見つめられているだけなのに、こんなにも胸が苦しくなるのだろう。