――部屋を出て、啓の後をついていく。



回りを見渡せば、マフィアばかり。痛いくらいに視線を感じる。



でも今のあたしには、そんな視線どうってことない。



今はただ九条に会うということで頭がいっぱいなのだ。



――戸田さん。



元気にしてるかな…?



会いたくてしょうがないよ。



会いたい



会いたい……。



あたしは震える手を必死に押さえた。



今あたしに出来ることは、九条から情報を聞き出すこと。



下手に逮捕しようとして殺されたりしたら元も子もない。



だから今は我慢。



それに九条の逮捕は、なるべく瑠樹也に任せたいし。



長年、瑠樹也は九条を追い続けて来たんだもん。



やっぱり九条を逮捕するべきなのは瑠樹也だ。



――…


ちょっと歩いて、大きな扉の前に止まった。



ここが…九条の部屋?



あたしがそのドアを見上げていると、啓が話し始めた。



「ここがボスの部屋だ。行こう」



「……うん」



啓の発言にハッキリと返事をしたあたし。



その返事を聞いた啓は、ドアをノックした。



「ボス。啓です。二宮水樹を連れて参りました」



「――入れ」



部屋から低い声が聞こえてきた。


啓はドアを開けた。



「入って」



啓に促され、あたしは中に入った――…