「……あたしの仲間も九条の被害者なんだよ」



「……あんたの仲間?」



啓は興味あり気にこちらを見た。


「うん。その子も今は特殊部隊なんだけど。その子のお父さんも同じ仕事をしてて、九条が起こした事件に関わってたの。それで九条を捕まえる現場で……九条に撃たれそうになった仲間を助けて亡くなったんだ…。」



「そう……なのか…」



「そう。その子は、今でも九条を恨んでる。自分の手で九条を捕まえるまでは…無念は晴れないって。」



あたしは瑠樹也の顔を思い出して、涙が出そうになった。



瑠樹也も啓も…
さぞかし辛かったんだろう。



「ねぇ、もうマフィアなんか辞めなよ……足洗いなよ…」



あたしは啓を見つめた。



こんなに心の綺麗な人が、マフィアなんかと手を組んでるなんて虚しすぎる。



「……今更どうにもならねぇよ」



啓は悲しく笑うと、立ち上がった。



――プルルルッ!!



部屋の電話が鳴った。



啓は素早く電話に出る。



「はい、啓です」



啓の口調から見ると…
相手は上の人間みたいだ。



「はい…はい。分かりました。すぐそちらへ向かいます」



啓は電話を切った。



「――水樹。今からボスの所へ行く」



「……九条の所へ…?」



啓はゆっくり頷いた。



――九条。



あんたは罪を償わなくちゃいけない。



あんたをこのままにはしておけない。



あたしは力強く立ち上がった。