すると彼はふっ、と微笑んだ。



「そんな目で見ないで下さいよ。俺はただの下っぱです。ボスの命令であなたの監視を任されたんですよ」



男は話しながらあたしに近付いてきた。



「みっ…みんなは!?みんなはどうしたの!?それに…ここはどこ!?」


あたしは近付いてくる男から遠ざかるように玄関のほうに向かう。


「お仲間さんなら今、あなたをお助けする為に頑張ってるみたいですよ?それと…ここはボスが経営するホテルです。」



ボスのホテル……?
ってことはマフィアが経営するホテルか。



――あれっ?



あたしは自分の手元を見て気付いた。



バッグがない。



あれには銃も入ってるのに――!!


「あたしのカバンは?どこにやったの?」



あたしは至って冷静に問いただす。



「あぁ、お鞄なら俺がお預かりしてますよ。」



男はクローゼットから、あたしのカバンを取り出した。



「それ返して。大事な物なんだよね」



あたしは手を差し伸べた。



「それは出来ませんね。ボスからは、あなたには何も与えるなと言われているので」



「……じゃあ力ずくでも取り返さなきゃね…」



あたしは迷わず男に近寄る。



そして男がカバンを持っている方の手を力一杯に握り込んだ。



「返してよ早く。腕、折られたいワケ?」



あたしは男に顔を近付けた。



そして更に手に力を込める。
男は少し顔を歪ませた。