「……新しく入った倉橋いるだろ?」



「倉橋?うん。」



瑠樹也のことだよね。



「あいつの父親はこの世界でも有名な特殊部隊の司令官だったんだ。それで…あの事件の日、倉橋の父親が率いる特殊部隊員は監禁された幼女を助けに入った。幼女は無事に保護されたんだけど…倉橋の父親1人が犠牲になった。」



「……瑠樹也のお父さんだけが…!?」



あたしは驚いて、聞き返した。
戸田さんはコクリと頷いた。



「助けに入る前……犯人は1人と聞いていたらしいんだけどさ…実際に中にいたのは3人だったらしい」


「え……!?3人も!?」



戸田さんはコクリと頷いた。



「酷い話だよな……あれは本当に大きな事件だったから本部と連繋だったらしいんだ。なのに…本部は情報を間違えて入れていたらしい。そのせいで中に突入した特殊部隊は混乱したが……倉橋の父親は冷静に判断して幼女を助けることを最優先に考えた。……だがその結果…」



あたしはゴクリと喉を鳴らした。


「……撃たれそうになった仲間を助けて…倉橋の父親は撃たれた。しかも運の悪いことに心臓と頭に大命中したらしい」



「う……そ…」



あたしは思わず口を手で覆った。


「……倉橋は…父親を凄く尊敬してたらしい。だから父親が亡くなってからは、誰とも心を通わせなくなったし、話そうともしなかったらしい。……だから今もまだ…ああしてるのかもしれないな」



戸田さんは遠くを見ながら呟いた。