「…私は、彼に、話すことなんてありません。」 (やっと、解放されると、思ったのに。) 「早く事務所に戻りましょう。」 (私、何してるんだろう。) 私は、そう言って、 梓の腕を振り払おうとした。 でも梓は、 私の抵抗をよそに、 全く、放してくれなかった。 そして…。 まっすぐな目で、私を見つめていた。 「…放して。」 私が、ポツリと言うと、 梓は、さらにギュッと強く握って、 放さなかった。