「治安を守るとは、何のためにあるのですか?」
横から吹く風に雪が混ざりはじめ、土方の長い髪を揺らす。
「民を守るためなのではないのですか? それが日本を守ることに繋がる、そう以前は信じることが出来たから、私は斬ることが出来ていた」
「多少の犠牲は仕方ねぇだろ。あんたは小難しく考えすぎだ。 新撰組が新撰組の地位を築くためなら、俺はなんだってする」
「ずっと昔も、君はそんなことを言っていたね」
「………」
「ただね、何を信じていいか分からなくなってしまった私には、もう刀を握ることは出来そうもない」
ポスッ
雪が重みによって沈んでいく。
山南は、近藤や土方が最も大事とする武士の魂を手放した。
土方は目を見開き、グッと拳を握り締めると山南の横をドスドスと歩き過ぎる。
ガジッと落ちた刀を取り上げた土方は、ズイッと山南に突きつけた。
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