奥歯を噛み締める。
痛みは直接胸へと落ちた。
「いつまでも引きずってる場合じゃねぇことは、あんたにだって分かるだろ」
時代は流れるのを待ってはくれない。
過去を振り返っていては、否、歩むことを止めてしまえば、それは時代に取り残されてしまう。
「君はどうして、そんなに強くいられるのかな」
「あ?」
「近藤さんと共に京に出ようと決めた時、私とて人を斬ることは覚悟していたさ。
それが、今の日本を守ることに繋がるなら良しだと、しかし…」
一旦言葉を区切り、山南は袖から手を出し刀を握った。
腰から離した刀を握り、自らの前につき出した。
「違ったのか」
「………」
「今の新撰組は、あんたの描いていたものと違ったのかよ」
「…否、新撰組はこれでいいんでしょう。 京の治安を取り締まるという立派すぎるお役目に参加できるのは誇らしく思う」
言っていることは新撰組を認めていたが、土方にはどうしても否定的に聞こえた。
寄せられた眉間の皺は、仏の顔には相応しくない。
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