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雪の重さに耐え兼ねた枝がミシミシと音を立てる。
重力に任せ折れた枝ごと地面に大きな雪の塊が落ちた。
「…今のあんたは、その枝と同じ道を進みつつある」
袖に通した腕がピクリと声に反応し、振り返って確認すると土方が庭に下りてくるところだった。
山南は一瞬だけ土方を見たが、直ぐまた元の位置に戻す。
「自分で自分の首を絞めようとすんじゃねぇよ」
「…そのつもりはないんだけどねぇ」
独特な雪を踏む音は、山南の斜め後ろで止まった。
二人して眺める木は、春になれば見事な桜の花を咲かせ潤いのない屯所を華やかに潤わせる。
「……屯所移転が決まった」
「……そう、ですか」
「なあ、山南さん。 いつからだ、いつから…あんたは刀を握らなくなった」
土方は山南の腰に差してある、大小の刀に目をやった。
長い間、その刀を山南が抜いたとこを見ていない。
「あの雨の夜以来です」
「まだ引きずってやがんのか」
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