「表面上はああでも…互いに無いものを補っているんですよ」
「ってことは、やっぱり仲良しなんですよね?」
「…ふふ。 土方さんは、感情表現が下手だらなぁ。 あ、でも土方さんが山南さんを嫌っていない、とっておきの証拠もあったりしてね」
「とっておきの証拠?」
クスクスと笑いながら、懐を漁る沖田。
取り出したのは一冊の本で、表紙に達筆で書かれた文字を声にする。
「……発句…集…?」
「矢央さん、もう少しお勉強しましょうね? これは、豊玉発句集と読みます」
分厚くもないそれをペラペラと捲り、沖田は目的のものを探した。
あった! と、満面の笑みを浮かべ指を指しながら、矢央にそれを見せる。
「…これ」
そのお世辞にも上手いとはいえない句でも、沖田の言わんとすることは伝わってきた。
「良い句だと思いません? 私は、この句…大好きなんですがねぇ」
「よくわからないけど、私も好きです。 で、これがとっておきの証拠になるんですか?」
「あはは! だってこの豊玉って、土方さんなんですよ〜」
「え゙ッ!? ひ、土方さんが…コレを?」
目の前でユラユラと揺らされている発句集と、ニコニコ顔の沖田を見比べる。
「これ見せたの、二人だけの秘密ということで!」
土方の部屋から勝手に持ち出したことがバレると何かと面倒だから、と最後に付け加えた。
すると矢央は頬を引き吊らせながら一つ頷き、もう一度句集を見てクスッと笑った。
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