まだ沖田が小さかった頃、近藤が出稽古で世話しなく働いているというのに、土方は近所の河原で昼寝をしているのに内心腹が立っていた。


手伝いの帰り、たまたま通りかかって聞き知った声につられて近寄ってみれば、意外なことに土方と山南が笑顔で話している光景に驚いたものだ。



「土方さんはね、山南さんがいるから我が儘が言えちゃうんですよ」

「意外だなって思ってたんです」


夕暮れが近付き気温が下がりはじめ、矢央は腕を擦った。

そんな矢央を気遣い、沖田はいつもより多く着込んだ綿入り羽織を一枚脱ぎ、矢央の肩にかける。



「意外とは、何がです?」

「山南さんを見ててほしいって、土方さんが頼むことがです。 私も二人は仲が悪いのかもって思っていた一人だったから」


しかし、矢央に頼む土方の背中は上司としての命ではなく、純粋に仲間を気にしてのお願いだと感じた。


その時、初めて分かったのは、土方は山南を心配しているのだということ。


古くからの友人の一人として、山南の変化に気付き、明里のように無茶をしないか気にしているのだろうと。



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