「沖田さん、それって土方さんみたいですよね?」


やはり彼女なら気が付くと思った。

沖田の表情は僅かに緩む。


「そうですね。 彼らは似ています。 どちらも裏方を引き受け、誰よりも他人のために頑張っているのに、それに値する対価を得ようとはしない」


沖田の中には、常に土方と山南は違う人物でありながら重なって見えていた。


土方が闇なら、山南は光。

新撰組の中では、鬼と仏。


如何なる時も新撰組のために、どんな犠牲も解離みず徒突き進むのみの土方がいれば、それに意見し歯止め役になるのが山南といえる。



「昔からね、そうなんですよ。 土方さんは喧嘩っ早くて、けど正攻法で攻める人じゃなくてね…」



『どんな卑怯な手口だろうが、喧嘩は勝ってなんぼ。 負けるくれぇなら腹斬って死ぬぜ」

『腹を斬るなんて恐ろしいこと言ってはならないよ、土方君。 喧嘩というのは一人では出来ないだろう? 売る側がいなければ買うことは出来ない』

『……てぇと?』

『力を誇示しての喧嘩など無意味だと、私は思う。 ただこれは、私の意見であって、君に押し付ける気はないんだよ』

『…あんたは、良い人すぎでぇ』


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