「厳しいですよ。 戦場で役立つからって治療の仕方とか、観察力を身に付ければ土方さんの役に立つから、とかで」

「土方さんはモテモテですね」


屯所移転の問題で、最近の土方は大忙しだった。

西本願寺は新撰組が来ることを快く思うわけがなく、どうにか諦めてくれないかと金銭や宴を開くなどしてみるが、何度話し合いを設けようが土方が受け入れることはない。


今日も今日とて、土方は西本願寺に向かい面倒くさげに話し合いをしているのだろう。



「土方さんが忙しくなればなるほど、山南さんは部屋にこもってしまう。 どうも上手くいきませんね」

「移転を止めたら良いんじゃないんですか?」


山南が反対しているのは、その移転話なのだろと矢央は尋ねるが、沖田は苦笑いしながら言った。


「移転そのものは反対じゃないと思うんです。 山南さんが反対なのは、きっと別にある……」


白い雪に負けず劣らずな己の白い手を天に翳すと、指の隙間から漏れる光に目を細めた。


想いに浸る沖田を見ながら、矢央は首を傾げる。


移転に反対したと聞いたのに、移転そのものは反対じゃないとはどういう意味かと。


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