年が明けて直ぐ、原田はおまさと結婚し所帯を持った。

新婚ほやほやな原田の家には、永倉を初めとし藤堂や矢央も頻繁に訪れていた。

いくら所帯を持ったからといって、原田は新撰組十番隊を率いる隊長なので毎日おまさの待つ家に帰ることはない。


巡察の合間や非番の日にしか家に帰ることができなくても、所帯を持ったからこそ、帰る場所守る者が出来た原田は、少しの時間でも隙をみておまさに会いに行く。


そんな毎日を幸せに思っている。


――が、原田が苛々を隠せないのは隣の永倉に対してだ。



「俺は帰るッ! ンな寒い日は、おまさを抱いて寝るのが一番だ!」

「だ、抱いてって!?」


山南と明里の熱さに感化されたのか、原田は恋しくなった妻のもとへ帰ろうと部屋を出ようとしたところを、背後から永倉に止められる。


原田の言葉に、何となく意味を理解した矢央の顔は熱を持った。


「こらっ、左之! 山南さんは良いとして、俺一人で残りの二人の面倒みさせるつもりかッ!?」

「お前は酒が飲めりゃ良いんだろぉが! 俺は、帰るっつったら帰る!」



揉める大人二人から静かに離れた矢央は、明里に呼ばれたことに気付き傍に寄った。


明里の背後から覗き込むと、明里の膝に頭を乗せ眠ってしまった山南がいた。


「最近、寝てないみたいなんです。 明里さん、今日はこのまま山南さんを頼めますか?」



てっきり酔っているとばかりに思っていた藤堂が、ニコッと笑み浮かべ明里に言っているの見て、密かに凄いと思った。

山南を寝かせるために酒を飲まそうと、わざと騒ぎ酔ったフリをしていたのかと。


「勿論。 藤堂はんらは、帰られますのんか?」

「僕たちは帰りますよ」


藤堂は、未だに部屋の入口で揉み合っている二人を見て苦笑いだ。


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