杉村と名をかえたのに、矢央には永倉として接したい永倉は手紙のどこにも矢央と別れたあとの家族とのことは書かれていなかった。
ただ死期が近いその時まで、矢央のことも気にかけていてくれたのだということが伝わり、読んでいる途中から涙が溢れ読み終わるころには泣き崩れる矢央を青年が支えてくれる。
「お、おい、どうした?大丈夫か…って大丈夫じゃねぇから泣いてんだよな」
「新八さんっ…ああっ…うわぁぁんっ」
やっぱり会いたいよ。
触れたい。
手紙をもらえたことは嬉しいが、そのせいで矢央の中で我慢していた想いが溢れ出して止まらなくなる。
その時、戸惑いがちに優しくふわりと身体を包む温もりにハッとした。
ーーーこの匂い…懐かしい。
「泣くな。なんつぅか、お前が泣くと…苦しくなるんだよ。変だよな?俺達初めて会ったんだよな?」
「…ごめんなさい。あと、ありがとう、それと初めてだけど、初めてじゃないかもしれないですよ」
懐かしい香と温もりに安心して落ち着いた矢央は、ギュッと逞しい腕を抱き締めて顔を上げた。
泣き笑いの顔で見上げてくる矢央に、ありえないくらいドキドキとして頬を赤らめる青年はな何故出会ったばかりの彼女にこんなにも惹かれるのか不思議でならない。