青年の背中を見送って呆然と立ち尽くす。

これはどういうことだろう?


何故あの青年は永倉に瓜二つで、でも青年は永倉を知らないと言った。


というか永倉がこの時代にいるはずがない。


どう見たって青年はこの時代で生きている人そのもので、服装なんて少しチャラい。


学生かな?



そんなことを考えていると青年が戻ってきて、矢央にある物を差し出した。



「なんですかこれ?」

「手紙だってよ。此処俺の爺さんが神主してるんだけど、だいぶん年取っちまって心配だからって最近引っ越してきたんだ」



青年の話によると青年は神主の孫で、年取ったお爺さんを一人には出来ないと思った青年の親が青年と共に最近引っ越してきたそうだ。


そして長い間手付かずだった倉の整理をお爺さんから頼まれた青年は、ある日古びた堤を見つけ中を開けると文があることに気付いた。


その宛名が間島矢央、そして送り主が永倉新八となっていた。




「爺さんに聞いたら、杉村っていう爺さんがこの手紙を持って此処にいつか間島矢央って女が来たら渡すように頼まれたらしくてよ。
でも爺さんすっかり忘れてたもんだから、埃被って眠ってたんだよ」



で、あんたは間島矢央だよな?と聞かれ、信じられないと震える手を手紙へと伸ばしながら頷いた。


「あれ?でも、これ爺さんが若い頃に…って言ってたんだよなあ。なんか可笑しくねぇか? うーん、爺さん惚けたか?」


青年が何かブツブツと言っていたが、矢央はそれどころではない。


永倉がこの手紙を矢央に渡るようにと、縁のあるこの神社に託した。


そして時は経ち、永倉そっくりの青年がそれを見つけだして矢央に直接その手紙を手渡したのは、運命ではないかとさえ思えてくる。