バスに揺られ暫しの休息を取った。
明日にはまた京都を旅立たなければならず、既に昼を回っていて次が最後の目的地だ。
そのあとは少し周りを観光でもしてゆっくりしよう。
彼ーー藤堂平助の墓は御陵衛士と共に眠っていて一番目立つ墓が伊東の墓その隣に藤堂の墓がある。
その墓の前に屈み花をいけて手を合わせる。
今までで一番長く手を合わせていただろう。
ふわりと風が頬を撫でたので、やっと顔を上げると矢央は嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱり会いにきてくれた」
目の前には有り得ない光景が広がっている。
この時代に帰ってきてから矢央の力はなくなって、治癒力も未来も見れなくなった。
不思議なことに巾着袋はあったのに、あの赤石は姿を消していたのだ。
なんの力もなくなってしまったのに、今矢央の目の前には墓石の上に座る藤堂の姿がうっすらと見えていた。
『久しぶりだね。君がこっちに帰る決断をしてから、いつか会いに来てくれるかなって思って転生するのを待ってもらってたんだ』
「新八さんと別れる時の風は平助さんの仕業だったんですかー」
『だってさー、じれったいんだよ二人とも。
新八さんって意外とああいうとこ弱いよな。
矢央ちゃんがいなくなってから……って、この話はよそうか。
ねえ矢央ちゃん、君は幸せなんだよね?』
藤堂らしい砕けた話し方が懐かしく、自然と頬が緩む。
「はい。幸せです。過去でも、此処でも私は幸せだって胸を張って言えますよ!」
そう言うと藤堂は安心したように微笑んだ。
『なら良かった。これで安心だよ、思い残すこともない。矢央ちゃん、まだ旅は続けるの?』
「はい。まだ行かなきゃいけないところがあって…」
『そっか。気をつけていきなよ。この時代は便利にはなっているようだけど、危険なところもあるようだからさ。君が僕のところに来るのは、まだまだ早いからね?』
続けて「あ、その前に転生しちゃうかも」なんておどけてみせる藤堂。
『じゃあね矢央ちゃん。達者で』
「はい。平助さんも」
『あはは!僕もう死んでるけどねー』
笑い声と共に藤堂は消えていなくなった。
瞼を綴じて気配を探ってみたけど、もうどこにも藤堂はいない。
会えて良かった。
「平助さん、次は平和な世に転生してくださいね」



