駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


この旅は範囲が広い上に時間にも余裕がなく次の目的地である京都についたころには疲労が溜まっていた。


「さすがに滞在時間一日ずつじゃ無理があったか…」


十八歳にして歳だろうかと溜め息つく矢央だったが、墓参りだけの目的な上に学生が貯めたお金ではこれが限界で各地に回れるだけ良しとしなければならなかった。



疲れた身体に鞭打ち次に矢央が向かった先は、この時代では観光地としても有名になっている京都霊山護国神社。


此処には坂本龍馬が眠っていて、その隣には中岡慎太郎の墓もあった。


此処でもまた一輪の花を添えて手を合わせる。



「坂本さん見えていますか?今の時代は坂本さんが理想とした国になれていますか?
私には今でもよくわからないけど、それでもあの頃戦なんてない平和な世が必ず来るって言ってくれたでしょう?
私は今、その平和な世で楽しく暮らせてます。坂本さんにはいっぱい迷惑も心配もかけたけど、あなたと出会えたこと過ごしたこと絶対に忘れません」




ありがとうございました。
と、最後に告げると「じゃあ先を急ぐので!」と慌ただしく去って行った矢央の背後で誰が笑ったような気がした。





そのあとは矢央にとっては慣れ親しんだ懐かしい場所である壬生寺へと向かう。

その前についでだからと八木邸にも足を運び、説明をしてくれるおじいさんの話を聞きながら、自分が此処で過ごしていたんだと感情に浸った。


壬生寺につくと過去にはなかった近藤の銅像があり何故か頭を下げてから、芹沢と平山の墓に一輪ずつ花をいけた。


新選組が壬生を離れてからはなかなか来れなくなったことを詫びたあと、矢央がこれまで辿ってきたことを少し省略しつつ話した。



「芹沢さんにも見せたかったなあ。新選組、本当にすごかったんですよ?て、そっちでお酒でも飲みながらお梅さんと見てたかな?」


きっとそうだろう。

そして何かにつけて文句を言っているに違いないと思い「お酒はほどほどに」と、笑いかけて壬生寺を去る。



本当に忙しい。

京都は広いし観光客も多く移動が大変だった。



「次は…山南さんか…」



山南は光緑寺という場所に眠っていた。

ちらほらと人はいたが人気スポットである護国神社や壬生寺と違い並ばずにすみそうでホッと息をつく。


春休みを利用した旅行客が多く、矢央のように新選組を辿ってきているらしい若い女の子達と目が合うと互いに微笑みあった。



山南の墓にも一輪の花をいけてから手を合わせる。


山南には勉学を教えてもらい、不慣れな生活の中で色んなことを教えてもらった。

周りからは一番親子みたいだと言われていたくらい、矢央は山南に懐いていたし慕っていたのに、彼や彼を愛した明里を救ってやることが出来なかったことを今でも悔やむ。


「もしも二人で生まれ変わっていたら、今度こそ二人で幸せになってください」



二人ならきっと生まれ変わっても、また出逢い愛しあえるはだと。