それから一年二年と経ち、矢央は高校卒業を機に神社のアルバイトも止め大学が始まるまでの休みを利用して一人旅にでることにした。
この一人旅はずっと前から決めていて、そのためにアルバイトのお金を全て貯金していた。
「よし!皆に会いに行こう!」
まずは函館からだと、歴史本を沢山読み漁り土方や新選組が辿った最期の戦をこの目で確認して回った。
此処で土方は最期の時を迎えたんだと思い、人目はばからず寝そべって空を見上げた。
「土方さんも、この空を見上げてたのかな…」
ふと周りの声が自分に向けられていることに気付いた矢央は、起き上がって苦笑いしながら汚れを叩くとその場をそそっくさと立ち去った。
そして北海道まで来たのだから、永倉が過ごしたであろう土地にも行ってみようかと思ったが思いとどまった。
そこは矢央が触れていい場所ではないだろうからと。
少し気落ちしたが、時間とお金を考えるとそこまで余裕があるわけじゃないので気を取り直して先を急いだ。
初めての飛行機に乗って考えるのは、皆がこれを見たらどんなに驚くかということで、常にぶっちょ面な土方の反応がもっとも知りたい相手だったりする。
「電車…汽車なら新八さんや斎藤さんなら乗ってるよねえ」
過去と照らし合わせて色々考えるのが最近は楽しくなりつつあった。
別れはとても辛く寂しかったが、後ろ向きな姿を見せては皆が怒るような気がして、とことん前向きに楽しく生きて行こうと決めた。
「大丈夫。私には皆との思い出がいっぱいある」
次の目的地は会津。
此処では新選組を離れた永倉も最後の戦に挑み、そして斎藤が最後まで戦い抜いた場所だ。
阿弥陀寺には斎藤の墓があり、矢央は一輪だけ花を添えて手を合わせた。
「斎藤さん、私帰ってきました。
斎藤さんも大変な時代を生き抜いたんですよね。私も斎藤さんに恥じないように精一杯生きていきます。だから見守っていてください」
もう一度だけ手を合わせてから、足早にその場を去った。



