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ゆっくりと瞼を持ち上げると、先程と同じ場所にいるのに少し違和感の覚える大木の前に立っていた。
「…帰ってきたんだ。あれ?あれれ?」
爪先の方を見ると赤い袴と草履が見えて、ペタペタと身体を触るとどうやら和装みたいで、そのまま辺りを見渡すと地面に放り出された箒と掃除途中なのが伺えた。
これはもしやと思い、慌てて走り出して向かった場所は神社の隅にある家で、此処には神主のお爺さんが暮らしているのと、アルバイトする人達の休憩所もある。
「やっぱりそうだ……」
此処に来るまでにほぼ確信していたが、更衣室の鏡を見て驚く。
鏡の中に映る矢央は、過去へ飛ばされた時の姿のままだったのだ。
黒髪が見慣れた矢央には、すっかり眩しく映る黄金色の髪と巫女装束。
「時間が経ってないんだ? お華さん、私が未来でもう一度やり直せるようにしてくれてのかな」
そうだとしたら、とても有り難い。
六年もの時間が経過していたら、色んな問題が発生して対象に困っただろうから。
可笑しな話で、今はお華に感謝しかなかった。
過去に連れて行ってくれたことも、皆に逢わせてくれたことも、未来の時を止めてくれていたことも。
やり直そう。
私は私の時代でーーーーーーーーーー



