冷えた風が頬を撫でる。



「でも良かった。まさかここで好きな人ができて両想いになれるとは思ってなかったから。
十五から二十一になるまでに、きっとあっちにいたらできなかった経験をいっぱいさせてもらいました。
皆に子供だ子供だって言われてたけど、ねえ新八さん私もう大人になったでしょ」


「矢央?」


確かに大人になったと言おうとしたが、眉を寄せただけで言葉は喉の奥につっかえた。


何かを決意したように微笑む矢央に不安を覚えた永倉は、矢央の手を握った。



「皆に守られて、皆に支えてもらって。私は、もう守られるだけの子供でも女でもないんです」

「なにを言って…」


黙って聞いてほしいのか、握られた手を強く握り返した矢央をまじまじと見詰める。



「覚えてますか。私が新選組を逃げ出した時、立場を顧みず新八さんたちは私を助けようとしてくれた。
あの時、新八さんが迎えにきてくれなかったら最後まで皆と誠の道を歩けなかった」



感極まってズッと鼻を啜り上を向く。





『俺は、お前に悔いのねぇ生き方をしてもらいてぇ。 俺達は、悔いが残らねぇように、今出来ることを精一杯やってる。
だからな、今此処で決めろ。 お前が後悔しねぇ進み方を、お前自身が今決めろ』



「新八さんが言ってくれたこと忘れない。
悔いが残らないように私は此処まで、皆の歩む誠の道を見届けました。
土方さんの最期の時が、私が決めた誠の一つの終わりです。そして新八さんに“おかえり”って言えたことが、もう一つでした。
だから………」




その続きがなかなか言えない。

言ったら終わりを迎える。

だけど言うと決断したから、言わないといけないと決意を新たに言葉を放つ。

















「私のこの時代での役目は終わったんです」