宇都宮城で負傷した土方が会津に入ったのは四月二十九日。


土方が会津に到着するも、戦は悪化の一途を辿った。


傷を癒やすために土方は鶴ヶ城下に留まり、東山温泉の不動ノ湯で治療をし、その間に天寧寺に近藤の墓を建てた。


救いたかった友を救えず、戦にも復帰できずにいた土方は近藤の墓の前に立ち何を思ったのだろうか。



「近藤さんのことも総司のことも、結局俺は何もしてやれなかったわけか……」


戦を離れた土方は、ふと矢央と沖田のことが気になり江戸へ戻ってきて、これまでのことをお互いに話した。

共に出来なかった分の穴を埋めるように、時々菓子を摘まんだりお茶目を飲んだりしながら、ゆっくりと語り合う。


「そんな風に言わないでください。それを言うなら私だって…」



ふわり。

俯いた矢央の頭を撫でる土方。


「お前は総司の傍にいてやっただけで良いんだよ。あいつを一人にしねえでくれて、本当に感謝している」

「…でもっ、私知ってたんですよ?
総司さんが病気で亡くなるって、なんとなく知ってたのに…それでも傍にいることしかできなくて…」

「お前は神でも仏でもねえ。医者でも治せねえ病なんだ。お前が気に病む必要はどこにもねえんだよ」


それは分かってる。
未来を知っていようが、この時代では沖田を助ける術がないことくらい。

でももしかしたら、何か方法があったかもしれないと考えてしまうのだ。





「俺もお前も、もう過去を振り返るのはよそう。もう進むしかねぇんだから……」



まだ少し痛む足に視線を落とした土方は、矢央にというより自分に向けて言った。