ーーやっと来てくれたんですね。


『今まで本当に頑張りましたね』


ーー私は何もしていませんよ。



沖田は矢央に視線を向ける。

何かをずっと語り続けている矢央を見て、チクリと痛む胸にすら手を伸ばす力が出ない。



ーー私がいなくなったら矢央さんは一人になってしまう。

今までずっと支えてくれていたのに、私は矢央さんを最期まで泣かせてしまうんですね。




『大丈夫です。矢央さんは、そんなに弱くないから。信じてあげて』


『そうだぞ。そろそろ矢央君を自由にしやれ』




自由。
新選組に関わったことで、矢央は本当に狭い世界の中で生きてきた。

その中で必死に生きて、愛しい人にも出会えたというのに、今度は自分(沖田)という枷で矢央の自由を奪ってきた。


矢央はきっとそんなことはないと言うだろう。

優しい子だから。



「ーーでね、あの時ーーだからーーーと、思うんですよねーー」




一人話し続けている矢央の背中に向かって、沖田は震える口を開き言った。



















「矢央さ、ん…今まで…ありがとう…」



本当に本当にありがとう。

貴女に出会えて、貴女がいてくれたおかげで、私は此処まで生きることができました。


だからどうか、どうか自由に生きて

幸せになってください。










「総司さんに私言ってなかったですよね。
私総司さんのことーーー…っっ!!」



その時、矢央の頬に雫が伝った。