永倉と矢央が想いあっているといち早く察したのは原田で、親友の恋を応援してきた。
やっと結ばれた二人を誰よりも祝福し幸せを願った。
自分は家族を置いてきてしまったため、二人には出来ることならずっと一緒にいてほしかったのに、永倉は矢央を戦場に連れて行くことを拒み、矢央は沖田の傍にいることを願った。
想い合っているはずなのに、二人は互いに離れることを選んだ。
これまで矢央の苦しみを見てきた原田は、どうにか矢央に幸せになってほしいと願う一人だ。
別れる前に矢央の白無垢姿くらい見たかったのが本音だ。
「なんであいつは幸せになれねぇんだろな」
「去ろうとしている原田さんが言えたことですか」
「はは、ちげぇねえ。あいつはあとどんだけの奴を見送って、その度に泣くのかと思うと、それだけが気掛かりだ」
「…そうなる前に誰かさんが戻ってきてくれたら私も安心なんですけどね」
「…誰かさんねえ。いったいどっちが先に帰ってくるだろうな」
「あれ?もしかして、原田さんも気付いてました?」
少しだけ面白そうに笑顔を見せた沖田。
原田もニヤリと笑う。
「本人は気付いてなさそうだけどな。あれは、惚れてんだろ」
「ですよね?ですよねー。私の気持ちを知ってて、目の前でいちゃつくもんだから、斬ってやろうかと思ったくらいですよ、あの鬼」
「……いや、それ笑えねえよ」
「まあ、どちらでもいいです。早く矢央さんを不安から救いだしてくれるなら、今はどちらでも…ッゴホッゴホ!!」
突然咳き込んだ沖田に慌てて近寄ろうとしたが、それは沖田の手によって拒まれる。
原田に移すしてしまっては困るから、沖田はそろそろ…と言葉を濁した。
「…じゃあ行くわ。総司、死ぬなよ」
「原田さんもね」
共に戦った仲間にしか分からない想い。
二人はもう二度と会うことはないだろうからと、暫く見つめ合ったあと原田は矢央にするように最後に沖田の頭を撫でて部屋を出て行った。
その大きな背中を見つめ、沖田は小さく呟く。
「さようなら、原田さん……」



