「総司ぃ、会いに来てやったぞ!」
「…相変わらず賑やかですね。でも元気そうで良かった」
身体を起こそうとした沖田に、そのままで良いと手を前に出した。
苦笑いで頷いて布団に横たわったまま原田に顔を向ける。
「あれ、矢央さんは?」
「あ?うん、厠じゃねえか」
「そうですか。それで、原田さんは新選組を離れたんですよね?」
やはり少し瞼が腫れてしまった矢央は腫れが治まるまで部屋にいることにしたため原田だけ沖田の部屋にやってきて、沖田の問いに適当に答えた。
が、原田の普段の声は大きいので隣にいる矢央は聞こえていて「厠ってちょっと…」と、その言い訳に呆れていた。
「ああ、出来ることなら最後まで共にいたかったんだけどな」
「ふふ。それは仕方ないことですよ。原田さんには原田さんの想いというものがあるから。
では、今近藤さんがどうしているから知らないですよね?」
やっぱりこの質問が来たか。
馬鹿正直な原田が言わないか心配だが、流石に沖田の様子を見て言わない方が良いことくらい分かる。
「さあな。別れたあとは関わってねえから」
「そう、ですよね…」
長い睫が下がり頬に影を作る。
「んなことよりお前、矢央とこれからどうするつもりなんだ?」
「どうするとは?」
「んー、お前、矢央にホの字だろ。見てたら分かる。惚れた女といつも一緒にいて何もしねえのか?」
「…相変わらず原田さんの脳は小さいようですね。するわけないでしょ?
矢央さんには永倉さんがいるんだし、それに私は……」
ふてくされて布団を頭までかぶろうとして止まる。
「私は、多分もう長くないから」
「弱気なこと言うな。新八から矢央を奪う気持ちで生きてやれ!でないと、あいつ悲しむだろうが…」
永倉が矢央を置いていったことを知っている原田は、これ以上矢央を悲しませたくなかった。
永倉を止めようとはしたのだが、やはり戦に向かってしまい矢央の下に止まらせてやれなかった。



