暫くして漸くおさまった涙。

赤くならないように手拭いで優しく拭き取り、大きく深呼吸する。


現代にいた頃、教科書で読んだ近藤の最期。


彼は人生に後悔はなかったというように残されていたが、それは本当だったのだろうか?


本当は何故自分がこんな風に死ななくてならないと悔しくなかっただろうか?

本当はまだ仲間と共に戦いたかっただろうか?


それとも、そろそろ大人しく戦から離れ家族と穏やかに過ごしたいと願っただろうか?


どれも本人ではないので知ることは出来ないが、分かることはもう会えないということ。


芹沢鴨、岡田以蔵、藤堂平助、坂本龍馬、井上源三郎、山崎丞、近藤勇。



生きていれば、いつか会えるかもしれないが、彼らは死んでしまった。


だからどんなに願っても、どんなに待っていようとももう二度と会うことはできない。



教科書で何となく読んでいた歴史的人物達を、こんな風に想って泣く日が来るなんてと胸が締め付けられながら、それでもまた前を向くために立ち上がる。



受け止めると決めた。

見届けようと決めた。


だから立ち止まらない。



「原田さん、私落ち着いたら皆に会いに行ってこようと思います」

「ああ。さてと、んじゃあ俺も総司に会ってから行くとするわ」


もう涙を流していない矢央に安心して、原田も旅に出ようと立ち上がる。