原田は見てきた全てを矢央に語った。
近藤が捕らわれたと知った時、多少覚悟はしていたが土方は間に合わなかったのかと分かり、近藤の最期と土方の辛さを思うと涙を我慢できなくて大粒の涙を流した。
しかし、隣の部屋には今も近藤の帰りを待っている沖田がいるので必死に声を押し殺した。
「ーーーーーー」
矢央の頭を胸に収め、空いた手で背中を撫でて慰める。
「近藤さんは立派だった」
何が立派だ!と、昔の矢央なら怒った言葉も今はすんなりと入ってきて、何度も何度も何度も頷いた。
「わた、し、近藤さんにお礼言えてないのに…」
この時代にやってきて右も左も分からない矢央を受け入れてくれたのは近藤のおかげで、局長という立場からあまり深く関わることはなかったが、ことあるごとに矢央を気にとめていてくれた。
娘のように可愛がってくれた近藤に感謝の想いを告げられなかった。
「近藤さんなら分かってくれるだろ。それに、近藤さんは矢央に感謝してると思うぞ。総司のことを見捨てず傍にいるんだからよ」
「ううっ…近藤さんっ」
早く泣きやまなくては瞼が腫れてしまって、沖田になんて誤魔化せばいいか分からない。
だから必死に涙をこらえた。



