新政府軍に降伏した近藤は大久保大和だと名乗っていたが、新政府軍の陣営に連れて行かれた近藤はある人物を見て目を見開いた。




近藤の前に立ち、近藤を鋭く睨む男の名は加納鷲雄。

元、御陵衛士の生き残りだった。



「こいつは大久保大和などではない!新選組局長近藤勇だ!」



そう言われた時、近藤はすべてを受け入れたように微笑んだという。




そして、来る四月二十五日、近藤は板橋で斬首の刑が決まったのだった。



近藤はこの日まで昔を振り返り、仲間達のことを思い返していた。


弟のように可愛がった沖田は今は病床に伏せていて、最期に会いに行ってやりたかったと。

兄のように慕っていた井上の最期には立ち会えなかったことに悔しさを。


新選組のために最期まで頑張ってくれた山崎に心からの礼を言い。


最期の最期で別れてしまった永倉や原田に申し訳なかったと謝った。








そして友、土方歳三はきっと最期の最期まで近藤を助けるために奮闘してくれただろうと笑みを浮かべ感謝した。




近藤の首に刃が当てられ、そろそろ最期の時が迫る中、近藤に向かって叫ぶ。




「新選組局長近藤勇!あんたと過ごした日々は最高に楽しかったぜ!!」

「……」



ーーー原田君か。
最高に楽しかったと言ってくれるのか。


「ありがとう。俺も楽しかったさ」



武士になりたくて仲間と共に必死に駆け抜け、漸く念願叶って武士となり、なのに最期は切腹は許されない。


しかしそれもまた良かろう。

これが俺らしいのかもしれない。



新選組は歳がいれば大丈夫。



ゆっくりと瞼を綴じると、最後に沖田と会った時に矢央と交わした言葉を思い出した。



矢央君、君には沢山苦労をかけたな。

俺は先に逝くが、残した仲間達を頼んだよ。



刀が天に向かって振り上げられ、見守る人達は息を飲んだ。




「歳、あとはまかせた!」





そして一瞬のうちに刀が振り落とされ、近藤勇の頭は暗い穴の中へと落ち、残された身体はゆっくりと倒れ込んだ。





新選組局長 近藤勇。
慶応四年四月二十五日、板橋にて斬首の刑に処され亡くなる。

最後まで武士らしくとたった一人洋装に身を包むこともなく、刀一本で戦い抜き忠義を貫いた。

近藤の首は亡きあと、京の三条河原に晒され、そのあと大坂千日前にも晒されたという。


享年、三十五歳であった。