慶応四年四月二十五日、この日原田はある情報を耳にしていた。

それは新選組の近藤勇が斬首に処せられるというもので、新選組を離脱したあと永倉と共にいた原田は、その永倉とも別れ江戸に潜んでいたのだが居てもたってもいられず近藤の下へ急いだ。


当日、近藤の最期を見届けようと集まった大勢の人の間を抜け近藤の姿を探した。



暫く待って近藤が黒の紋付を着て髭を生やしたままで現れると、その姿を見て原田の拳はわなわなと震えだす。



ムシロに座り、その前に掘られた穴をじっと見つめる近藤。


髭を剃りはじめた近藤を見ながら周りは好き勝手話していたが、原田には何も聞こえてこない。


何故だ。
何故、近藤の最期が武士らしく切腹ではなく斬首で終わらなければならない。

確かに今まで近藤の態度は目に余るものがあり、仲間達と何度もぶつかってきた。



だが決して近藤勇という一人の男が嫌いだったわけではないのだ。


嫌なこともあった辛い別れもあったが、楽しいことも沢山分かち合い、ついこの間まで共に戦ってきた近藤。


最期に交わした言葉はなんだった?

最期に見た近藤はどのような顔をしていた?



楽しかった思い出ばかりが蘇り、ついこの間の近藤が出てこない。



「近藤さん…」