今日は朝から雨がしとしとと降っていて、洗濯物が干せないとボヤく矢央を訪ねてきたのは原田だった。



「よお!矢央、元気にしてたか!?」

「原田さん!!おかえりなさい!」



両手を広げる原田の胸に戸惑うことなく飛び込んでくる矢央に、原田は笑顔で「ただいま」とい言って軽々と持ち上げた。


流石に高い高い状態になると、矢央も頬を膨らませる。



「もうっ子供じゃないんですからね!」

「悪い悪い。お前が軽いからついな。ちゃんと飯食ってんのか?」


立ち話もなんだからと部屋に通しお茶を出す。


何も言わなくてもおもてなしが様になり、すっかり女性らしくなった矢央に嬉しいような寂しいような。



「食べてますよ。あ、あとで総司さんにも会ってあげてくださいよ。今は寝てると思うから」

「ああ、総司はどうなんだ?」



誰かに会う度に聞かれる言葉に、矢央は苦笑いで頭を振った。


この瞬間が今は一番辛いかもしれない。



「最近は、お粥すらまともに食べられなくなってます。起きてる時間も減ってるし…」

「お前、大丈夫か?」


ぽんぽんと頭を優しく撫でられ顔を上げる。


「大丈夫です。総司さんは頑張ってるんだもんね!私も頑張ります!」



鼻を鳴らしガッツポーズをする矢央を見て、本当に強く逞しく成長してしまったことに、また嬉しさと寂しさが募った。