お茶をいれて戻ってきた矢央と沖田と暫く話をしていた土方だったが、そろそろ行くと言って腰を上げた。


帰り際ちらっと沖田を見れば、憎たらしい昔の沖田らしい笑みではなく切なそうに無理と笑う沖田が手を振るので何とも言えない感情が芽生えた。


上手く笑えていたか気になったが、それより今日此処へ来た目的を達成しなくてはならないと背を伸ばす。


玄関前まで送りに来た矢央と向き合うと、矢央も何かを察していたのか真剣な表情で言葉を待っているようだった。




「お前にだけは言っておく、総司には言わないでほしい」


と言うことは、きっと近藤についてなのだろうと深呼吸して気持ちを落ち着かせた。



「近藤さんが新政府軍に捕まってる。俺は何としても近藤さんを助けるつもりで、今はそのために新選組から離れてる」

「近藤さんがっ」


覚悟は決めていたのに、震える腕を止めようとぎゅっと握っても震えは治まらない。


否しかし、近藤が死んだわけではないし、土方がきっとどうにかしてくれるはずだ。




「大丈夫ですよね?近藤さん、戻ってきますよね?」

「………」



頼みの綱だった勝海舟に近藤を助けるための書状を書いてほしいと頼んだが、あっさりと断れてしまった土方は打つ手がなかった。


まだ何かあるはずだと考えているうちに、勝手に足が此処へ向いていた。