「間島」


トボトボと足取り重く沖田の下へ戻ると、途中斉藤と出くわした。


まさか斉藤に会うとは思ってもみなくて驚く矢央の目の下をカサついた指が撫でる。


「泣いたのか?」

「あっえっと…。それより、なんで斉藤さんが?」


上手く説明出来そうもなくて話を逸らしたが、斉藤は問い詰めることはない。


「時間が出来たからお前達を訪ねた。が、間島には会えないかと思っていたが、会えたな」

「斉藤さん…」


斉藤の貴重な笑顔に心が休まる。



「少し話そう」


口数の少ない斉藤が珍しく誘ってきたので、何となく予想がつく。

またか、と。



大人しく付いていった先は斉藤にしては、これまた珍しい甘味処だった。

確か甘いものは苦手だと言っていたような?



「本当ならば早く冷やした方が良いのだろうな」


何が?と問わなくても、斉藤が矢央の腫れた瞼を見ているので察しがついた。


苦笑いで「大丈夫です」と答えると、ちょうど矢央の頼んだ餡蜜と、斉藤の頼んだ団子が運ばれてくる。



「永倉さんと原田さんには会ったか?」

「…あ、原田さんには会ってないです」

「ということは、昨夜は永倉さんと二人だったのだな」

「へ?…ああ、かまかけました?」

「はは。沖田が間島は帰って来ていないと言うから、多分そうだろうとは思ったが。
そうかそうか、間島がな」


何か勝手に納得している斉藤を横目に、恥ずかしさを紛らわすように無言で餡蜜を頬張った。