白い布団の上で小さな白い肩が小刻みに上下する。


昨夜はあんなに熱かったのに、何も身につけていない身体は寒さに震えた。




「…っう…ううっ…」



眼を覚ますと、永倉の姿は何処にもなかった。


痛む身体に鞭を打ち起き上がって、ぐるりと部屋を見回しても狭い部屋だ、彼がいないことは直ぐに分かる。


もしかしたら厠に行っているのかもと期待して暫く待ってみたが、やはり彼は帰ってこなかった。



直ぐに諦めがついたのは、枕元に永倉が置いて行ったのだろう銭が巾着袋に入れられ置いてあったから。


中を確かめても、この時代のお金の価値が分からない矢央には使い道がないように思えたが、その額を後で聞くと相当な額だと知る。


永倉は矢央が暮らしていけるだけの金を残して行ったらしい。


きっとこれくらいしかしてやれないと思ってのことだろうが、矢央はそんなものほしいとは思わなかった。




「こんなものいらないっ……新八さんっ…」



昨夜の嬉し涙が嘘のように、瞼が腫れるまで悲しみの涙を流し続けた。


永倉の温もりを探すように、布団の上に腕を伸ばしギュッと掴む。



涙で滲む視界にある物が映り、それが永倉から貰った結紐で、震える手を伸ばしそれを握り締めた。




「……ぐずっ…帰え…らなきゃ…」




正午、漸く矢央は部屋を出て行く決意をする。



外へ出ると燦々と照る光りに眼を細め、ぎこちない笑みを浮かべ帰って行く矢央の姿があった。