お腹が空いてるだろうと蕎麦屋に立ちより、二人でたわいない話で盛り上がる。
そうしてるうちに蕎麦が運ばれてきて食べていると、視線感じて顔を上げた。
「よくよく考えてみたら、矢央とこうしてゆっくり蕎麦を食いにきたのは初めてだよな」
「そうでしたっけ?」
「なんだかんだ左之やら平助がいたらかな」
三馬鹿と言われるくらい仲が良かった三人。
その内の誰かといると、高確率で誰かが加わり最後には四人になって土方に馬鹿が四人になったと呆れられていた。
「懐かしいですね。そういえば原田さんは元気にしてますか?」
「ああ、あいつは煩いくらいだ。少しは静かになんねえもんかね」
もぐもぐと蕎麦を頬張りながら悪態つく永倉だったが、どう見ても原田を鬱陶しがってるようには見えない。
文句言いつつ、なんだかんだ好きなのだ。
「いいなあ…」
二人の関係を思い浮かべ思わず漏らすと、「何がだ?」と問われる。
「私にもいたんですよ。親友と呼べる子が。どうしてるかな、元気にしてるのかな」
「…そういやお前はあっちで好きな奴の一人や二人いなかったのか?」
「好きな人いないですよ」
即答する矢央に嬉しいようで、おいおいと突っ込みたくなる衝動を抑える。
いつの間にか蕎麦も食べ終え勘定をすませて店を出て、目的地があるわけでもなくまた肩を並べて歩いた。
「十五だよな。普通いるだろ」
「いなくても普通ですよー。私は友達と遊んだりするほうが楽しかったし」
「まあ、なんとなく分かるわ。お前のこと初めは餓鬼だなーって思ってたしな」
意地っ張りで無茶をして、周りを巻き込んでは落ち込んで。
色んな表情にコロコロと変化する、歳より幼く見える少女だった。
「なのに知らねえ間に惚れてたらしい」
「らしいって……」
それでは、今は惚れてるか分からないような言い方ではないかとむくれていると、クシャクシャと頭を撫でられて、怒る気もなくなる。
ああ弱いな、私って。