永倉に会えたのは、更に数日後だった。


気持ちいい陽気の下、玄関先を掃いていると背後から「矢央」と名前を呼ばれ振り返れば、永倉が一人手を上げていたのだ。


「し、新八さんっ!?帰ってき…あ、おかえりなさい!!」


永倉の顔を見た時一瞬泣きそうになったのを寸でのところで耐える。


土方の文には戦のことと、現在のことは書かれていたが誰それの生死についてら書かれていなくて、そんなことはないと信じながらも内心落ち着かない毎日を送っていたから。



良かった。生きていてくれた……。


泣くよりも、生きて会いに来てくれたことが嬉しくて約束通り笑顔で出迎えることができた。



「ただいま。土方さんに二人が此処にいることを聞いてな。矢央、少し出掛けよう」

「…は、はい。じゃあ、支度してきます!」



慌てて家の中に戻って行く矢央の姿を、複雑な表情で見ていた永倉の意図を知るのはまだ少し後のこと。








「よくこの川で水浴びしてたな。一度魚を捕まえようとして、総司と平助が互いに夢中になりすぎてよ、頭ぶつけて転けたことがあった」

「ああ、なんですかそれ!そのありきたりな展開は!」



沖田に永倉と出掛けてくると告げると、少し寂しそうに微笑んではいたが「気をつけていってらっしゃい」と送り出してくれた。


その後、永倉は矢央を連れて適当にぶらぶらと歩いては、時々立ち止まり思い出を聞かせてくる。



「この居酒屋は、俺と左之が初めて平助を誘って飲んだ店だ」



腕を組み懐かしそうに目を細める。


そんな永倉を見てから、周りにも視線を向けてみた。


この町で永倉は色んな思い出を作ってきたんだなと思うと、胸が熱くなった。


それと同時に何故か先程から言いようのない不安が押し寄せてくる。



「矢央、今日は一日一緒にいてくれるか」


永倉に視線を戻した時、真面目にそう聞かれあまり深く考えることなく頷いていた。