近藤を見送った数日後、沖田の病状は殆ど以前と変わらない状態に戻った。

否、一時的に回復していたからか、見た目以前より酷く感じてしまう。


そしてこの頃、沖田は植木屋平五郎宅に身を移し療養を余儀なくされた。




「総司さん今日は天気が良いから空気の入れ換えしましょうね」


佐藤家を出る時、勿論矢央は沖田と共に出ることを選び、その判断を土方の姉は何も言わず受け入れてくれた。


「いつでもおいで」と、何かあった時頼れるように言葉をくれたことが嬉しかった。



「お粥作ってもらったんですけど食べれますか?」

「…ふふ。矢央さん相変わらず料理は苦手そうですね」

「だってこの時代の物は色々と面倒なんですからね!それだけ話せるなら、お粥食べてくださいよ」



お粥を沖田に渡し、部屋の戸を全て開けると気持ちいい風が部屋を舞う。


冬も終わり春が来て、だいぶん過ごしやすくなってきた。


「そういえば近藤さん達、江戸に戻ってきたようですね」

「ええ。文では、その内顔を出すと書いてありましたが」



戦に負け江戸に戻って来た土方から文が送られてきて数日、顔を出すと書いていたがそれがいつになるのかなんて分からない。


きっと彼等は今正念場だろうことくらい、沖田にも矢央にも分かるからだ。



「永倉さんから文は来てないのですか?」


開けた戸の傍で庭を眺めていると沖田に聞かれ、目を泳がせて苦笑いする。


土方は意外とマメなようで、よく文をくれるが永倉はそれがなかった。

だから当然、江戸に戻っているという知らせは土方からしか来ていない。



矢央の表情を見て察した沖田は、それ以上何も言わずお粥を平らげることに専念した。