江戸に個々に逃げる間、隊士達のまとめ役となったのは永倉と原田だった。


近藤が戻る前に此からのことを考えた結果、彼等と大半の隊士達は会津で戦おうと決めたのだが、これを聞いた近藤は頷くこはなく、互いの間に静かな攻防が繰り広げられた。



「俺達は会津に行くことに決めた」

「決めた?それは君達が決めることなのか?」

「あ?」

「君達に隊士を預け戻ってみれば、皆俺の指示なしに会津へ向かう。おかしいではないか、此からのことを決めるのは局長である俺だ」



永倉と原田の額に青筋が浮かぶ。

相当怒りに耐えているようで、握られた拳がわなわなと震えていた。



「我々はこれから流山へと向かう。隊士もまた募ってだな…」

「俺達の話には耳も向けねえつもりか?」

「………」

「永倉、落ち着け」



黙って聞いていた土方が漸く永倉を制するが、永倉の我慢は限界に近く黙ることはない。



「これまでの戦でどんなけの仲間が死んだと思ってる。俺は退けと言ったよな?
人数でも武器でも見るかに勝てねえと分かって、みすみす仲間を殺すくらいなら、一旦退けと言ったよな?」

「………」

「だが近藤さんは、戦うことを選んだ。すでに士気の下がった隊士達に戦わせ、無駄に命を捨てさせやがった」

「永倉それは違う」

「何が違う!?結果負け、仲間は死んだ!
あの時の近藤さんは、武士は逃げてはならねえの一点張りだったが、土方さんなら違ったんじゃねえかっ」

「俺の判断の誤りだと?」



これは不味い状況だと土方は密かに背中に汗を流した。


近藤は永倉を睨み、永倉もまた近藤を睨む。