駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


そして翌日、納得いかない顔をしたままの沖田と共に近藤を見送った。


最後まで何か言いたげな沖田だったが、さすがに諦めたのか「お気をつけて」と、近藤をおとなしく見送る。



昨日と同じように後ろ姿か見えなくなるまで、二人共無言のまま見送り続けた。




「行っちゃいましたね」


雨はまだ止まない。


視界の隅で傘が傾くのが見えた。



「総司さんっ?」

「…っごほっ…だ、大丈夫っ」


膝を付いて口元を押さえる沖田。


やはり病状が戻りつつあったらしく、近藤の前では強がってみせていただけらしい。


「近藤さんは騙されてくれなかったあ。私の負けですね」

「生きてほしい」

「え?」

「昨日、近藤さんが言ってました。少しでも長く総司さんには生きてほしい。これは最後の我が儘だって」

「近藤さんが、そんなことを…」



沖田を立たせ家の中に戻る。

玄関先に腰掛けたまま、大きくできた水溜まりをぼんやりと眺めた。



「総司さんに近藤さんが必要なように、近藤さんにも総司さんが必要なんです。だから生きていてほしくて、無理をさせたくなかったんです」

「それでも私は近藤さんの傍にいたかったのに。本当、我が儘だなああの人は」

「総司さんも負けてませんよ」


ほら部屋に戻りますよ。
と、沖田を促し玄関の戸を閉める。



これでとうとう新選組(甲陽鎮撫隊)は全員いなくなってしまった。


彼等の中の誰と再会できるのか、今は分からないが待つしかない。

ただずっと彼等の無事を祈りながら、彼等の帰りを待ち続け言おうと決めている。







「おかえりなさい」



笑顔で出迎えようと。



そして言ってほしい。



「ただいま」



どれだけの人が、そう返してくれるのだろうか。