土方の睨みが効いたのか原田は「おー恐っ」と駆けて行った。

その後ろ姿を見つめていると、肩を叩かれ上を見上げる。



「じゃあ行ってくる」

「…はい。いってらっしゃい」



暫く見つめ合って、永倉は一歩また一歩と足を踏み出して行く。


いつも見ていたゆらゆらと揺れる尻尾のような後ろ髪がないのが少し寂しい。



別れは何ともあっさりしたものだった。


あれ以上互いに何も言葉を交わすこともなく、振り返ることもなく彼等の姿は小さくなっていった。




「必ず無事に帰ってきてください」


そう願うことしか出来ない歯がゆさを、この雨が洗い流してくれたらいいのにーーーーーー









「何してるんですか?」


土方達を見送ったあとは特にすることなく、近藤の忙しそうな姿を見ていた矢央だったが、漸く人が途切れたのか沖田が近藤の傍から離れない。


しかし疲れを見せない近藤の顔を見ると、久しぶりに沖田と二人でゆっくり話せる時間を楽しんでいるようだったので、二人の邪魔をしないように気を利かせお茶でもいれようと部屋を出た。


そして頃合いを見てお茶を三人分もって戻って見ると、何故か沖田が四股を踏んでいたので驚いたのだ。



「やあ矢央君。昨日はご苦労だったな」

「あ、いえ。ところで総司さんはなにを?」


近藤に湯呑みを渡し尋ねる。


矢央の存在に気付いているはずなのに、変わらず四股を踏み続ける沖田。



「近藤さんが心配性なので、私が元気なことを証明しているのですよ!」

「証明?四股が?」


何故それが証明になるの?