「は、初めまして!私は近藤さんや土方さんにお世話になってます、間島矢央です」


こいつ珍しく緊張してんな。


土方に連れられて矢央は佐藤彦五郎と妻のぶに挨拶中だ。


土方の隣で小さくなって正座している矢央を見て、土方の義兄と姉は優しく微笑んでいる。


「そう堅くならないで。何も取って食いやしないよ。俺は佐藤彦五郎で、こいつが」

「のぶです。歳三の姉でもあります。貴女が矢央さんね…」


のぶは矢央をまじまじと見やると、嬉しそうに微笑んで矢央の傍にやってくる。


「貴女のお話は歳三から文を貰い知っての。何かと心細いでしょうけど、遠慮なく頼ってちょうだいね?」

「あ、ありがとうございます!」



土方が矢央を此処に連れて来たのは、沖田と共に過ごすことを決めた矢央のためでもあった。

土方達から離れて暮らすにしろ、沖田と共にいるにしろ矢央が心を許し頼れる存在を作ってやらねばと思っていたのだ。

そして土方の姉は面倒見が良く、男勝りな性格のため矢央も懐きやすいと思っていたし、のぶも矢央を快く迎えてくれると確信していた。


何故なら、末っ子の自分の頼みをのぶは断らないと知っていたから。


たまに鬱陶しいと感じながらも、母親代わりののぶに可愛がられている自覚は十二分にあったわけだ。


「それにしても歳三が言っていたようには感じないわね?」


ふと呑気に余所事を考えていると、のぶが言った。



「矢央さんは、とてもお転婆でしかも我が儘で手の掛かる餓鬼ってーー」


そこまで言ったところで矢央の拳が土方の腕にヒットしていた。


「あらあらお転婆なのは合ってそうね」

「えっ?いや、そのっ…土方さんの馬鹿っ」

「あ?間違ってねえだろ。手のかかる餓鬼ってとこが特に」

「子供じゃないっ!!」

「どのへんが?」

「もう二十歳です!」

「いやいや、見た目十五のままだろ」

「うっさい!おっさん!」

「あ″あ″んっ!?てめえ、誰がおっさんだっ糞餓鬼!!」




埒の着かないやり取りを見て、彦五郎とのぶは最初こそ驚いたが直ぐに楽しそうに頬を緩めて二人の姿を見ていた。