「私にほんの少しでいい、近藤さんを安心させてあげられるだけの力をくれませんか」








消え入りそうなその声に、どうやって嫌だと首を振れるのだろうか。

そんなに酷い人間には成り切れない。


矢央が一時だけ沖田の病の辛さを拭ってやったとしても、沖田の病自体を治すことはさすがに出来ない。

死に値するものを癒やそうとすれば、きっと自らの力が追い付く前に自らが命絶えてしまうだろうから。

それはお互いに望むものではないだろう。


矢央が一時でも辛い思いをするかもしれないが、それでも願わずにはいられない。




「もう一度だけでいい。もう一度だけ、近藤さんの隣で笑っていたい」



ーーー私は元気だから心配いらないと。



ギシっと床の軋む音に僅かに顔を上げると、そこには矢央の笑顔があった。

そして背中に添えられた手の温もりと、スーッと和らいでいく痛み。


沖田の見開かれた双眸から、ボロボロと涙が溢れた。





「ごめ…んなさいっ…ごめんっ…。





ーーーーありがとう」