矢央は芹沢を慕っていた内に入るだろう。

無理矢理だったとはいえ小姓も勤め、芹沢を助けるためにたった一人乗り込んで来たくらいだ。


暗殺を止めに来た矢央は、結局はそれを止めることは出来なくて、あの出来事はその場にいた五人にそれぞれの想いを残した。



「芹沢さん……君はなついていた」


視点の定まらない瞳が左右に揺れて、小刻みに震える手に止まる。


「何があったのか分からないけど、乗り越えるのに、かなり遠回りしましたよ。
悲しくて辛くて悔しくて、どうして仲間同士が争うのか分からなくて、誰も信じられなくなった…」


そして新撰組を去った。

去ってからも、いろいろ考えることばかりだった矢央は時間をかけて、その心を癒しはしたが。



「今まさに私がそうだ」

「え?」

「邪魔者は消す。 それが新撰組のため? では我々も邪魔になれば消されるのかい?」

「……多分」


土方なら迷いつつ、きっとそうするだろう。

土方歳三ではなく、新撰組副長として。


それが悲しい現実だと矢央は胸を痛めたが、それは自分だけではないと分かった。

皆心に傷をつくりながらも、地に足をつけ踏ん張っているのだと。



「それでも、みんなが此処から逃げないのは志があるから……。 自分のために仲間のために、此処にいるんだと思います」


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