「そうか、山崎がなーーー」


取り敢えず休息だと部屋へ連れて行かれ、茶を出してもらった矢央は渇いた喉を潤したあと江戸に着くまでに山崎が亡くなったことを報告した。



膝の上で握り締められた湯飲みが揺れる。



「ちゃんと別れてきたのか?」


永倉を見ると、優しい眼差しを向けてくれていて、うっすらと涙が浮かんだ。


コクンと頷くのが精一杯だった。



「矢央にとっちゃあ唯一の上司なんだよな?あれ?総司もか?」

「まあ一応はな。総司の指示を受けたことはねえだろうが。矢央、我慢する必要はねえ。此処には俺達しかいねえから好きなだけ泣けばいい」



優しく頭を撫でられると、もう無理だった。

船の上でも泣いたが、やはりどこか気を張り続けていて、永倉の傍では我慢が出来ずうわーんと声を上げて泣いた。



そして泣き続けたあと、泣き疲れてそのまま眠った矢央に膝枕してやると永倉はいつまでも優しく頭を撫で続けていた。






「なあ新八。俺達はこれからどうなるんだろうな」


矢央の泣きはらした顔を見つめながら、原田はボソッと呟き、永倉はその顔を見て溜め息を吐く。



「さあな。仲間の数も大分減っちまったし。近藤さんはいつ復帰するかも知れねえ。土方さんは、どうする気でいるんだろうな…」

「…あ″あ″っ!!難しいことは俺には分かんねえわ!でもよ、俺達は俺達のしたいことをやるまでだな」

「ああ、そうだな」




こうして江戸に着いたその日は暮れていった。