その後一月十五日、新選組は釜屋に身を置く。

近藤と沖田は、療養のため松本良順のいる和泉橋医学所へと向かった。





「新八さーん!原田さーん!」


土方に着いて釜屋へやってきた矢央は、永倉と原田の姿を見つけ笑顔で走り寄った。


その声を聞いた永倉は両手を広げ矢央を抱き締めようと待ち構えていたのだが、


「矢ー央っ!元気してたか!?」

「うひゃっ!は、原田さん!?」



何故か先に原田が矢央を抱き上げ、軽々と持ち上げてしまったため開いたままの両手が虚しく空を掴む。



「………」



背の高い原田に持ち上げられたまま苦笑いを浮かべ隣にいる永倉を見れば、やれやれと呆れていた。


「あ、あの原田さんも元気でしたか?」

「おうよ!お前らが来るまで暇で仕方なかったぜ」

「暇ってことはねえだろ。つかいつまで俺の女を抱いてるきだお前は?」



俺の女発言に頬を染める矢央。


「ちょっとくらいいいじゃねえか?こうも野郎ばかりでむさ苦しくて仕方ねえんだから癒やしがねえとな!な、矢央?」


同意を求められても困る。



「あ、でもそろそろ下ろしてくれませんか?周りの目が痛いです」


そう言うと渋々下ろされた矢央の身体は、今度こそ愛しい男の腕の中に収まった。


苦しいくらいにギュッと包まれたが、それすら嬉しい。



「矢央。無事で良かった」

「はい。新八さんもご無事でなによりです」


暫し互いの温もりを確かめあっていると、先に動いたのは矢央で、もぞもぞと永倉の胸元から顔を上げた。


切なげに寄せられた眉根。

その顔を覗き込んだ永倉と原田は、何かあったんだと直ぐに察した。