訝しげに見ていれば、目の縁に溜まった涙を拭った土方が「俺に可愛さを求めるな」と、さらに笑う。


「そうやって、たまには笑えばいいんです」

「あ?」

「笑えば多少の疲れは吹っ飛びますよ」

「……わかった。母上」

「…っっだーかーらー!土方さんみたいな息子はいらーん!!」

「っははははは!!」



こんな土方は初めてだ。

厳しく時に優しかったが、やはり鬼と言われるだけあり怖い印象が強い彼。

笑うと目元が下がり優しげな雰囲気になり、もともと美丈夫なだけあるその顔は男でも綺麗だなって思った。


「…見惚れてんなよ?永倉が妬くぞ」

「…見惚れてません。それに新八さんが妬くわけ…」

「いや、妬くぞ。めちゃくちゃ妬くっつーの!」

「ふえっ!?」


どこから現れたのか、突然背後から覆い被さってきた永倉に驚いた矢央。


「おい土方さん、顔が良いからって許されることと許せないことがあるからな?」

「顔は関係ねぇだろ」

「いいやあるね!あんたは自分の顔が女共に受けが良いことを知ってやがるし?
ちょっとくらいお痛したところで許されると思ってるに違いねえっ!!」



顔の横から伸びてきた拳にビクッと身体を揺すり、恐る恐る土方を見上げる。


そろそろ鬼の副長が復活するのではないかとヒヤヒヤした。



「お痛って餓鬼かよ俺は。まあ、新選組一顔が良いのは認めるがな」

「「………」」



腕を組み鼻で笑った土方を、永倉も矢央も目をぱちくりさせながら見ている。

鬼の副長は何処へ行った!?


心の中で二人の声が揃ったことなんて知らない土方は、そんな二人を見て微笑んでさえいる。



「土方さん、さっきの握り飯当たっちゃったとか?」

「あ?腐った飯食わせたのかよ?」



ふるふると首を振る。

そうじゃないけど、と口ごもる。