「此処の団子は、何度食べても飽きねぇな」

「うふふ。 左之助はんはてっきり辛党かと思うてたわぁ」

「いや、甘いのも好きだぜ?」


団子を豪快に頬張る原田の隣で頬を赤めて微笑む女子の名は "おまさ" という。

おまさは、原田を新撰組と知りながらも彼の気さくさに惹かれていた。



「悪かったな。 この前は、怖いおもいをさせちまってよ」


禁門の変の時、京の街は火に包まれた。

おまさの事を気にはかけていたものの、新撰組として京を守らなくてならなかった原田が、おまさに会いに来る今日まで大分時間がかかってしまった。


そのことを詫びる原田だったが、おまさは頭を左右に振る。


「いいえ。 左之助はんが、こうして無事でいてくれはったことが私は嬉しいんです」

「おう! それなら安心しな! 俺は簡単にはくたばってやらねぇから」

「うふふ。 それは頼もしいこと」


二人の周りには花が舞っているかのような甘い雰囲気が漂う。

その様子を、意外な場所から観察していたのは………



「姉ちゃん、こっちに団子一人分頼む」

「………」

「おい! そこの姉ちゃんだよ!」
「………」

「おいってば!」

「もう! うっさいな! 団子なら店の人に……」


旅人らしき男に袖を引かれ鬱陶しそうに払った矢央は 「あ…」 と、しまったと言うような表情を見せた。