「俺をむちゃくちゃだって言うなら、今からすることもお前なら受け入れてくれるよな?」

「え?」


鼻先がくっつく位の距離で見つめ合う。


「あのっ…」

「矢央、黙ってろ」

「……っ」


唇に息がかかって直ぐ、その唇に熱いものが押し当てられる。

矢央にとって初めての口付け。


かああっと身体中の熱が上がっていき、目の縁に涙が溜まっていく。



「目つぶれよ、ばーか」

「…っだって…」


口付けなんて初めてだから、どうしていいか分からないんだと訴えようにも、また口を塞がれてしまう。


「…ふっ……ん…」


身体を震わせると、最後にペロッと唇を舐められ離れていくのを目で追った。

唇しか見れない。
恥ずかしくて顔がまともに見られない。


「むちゃくちゃだ……」

「そんな俺の傍にいてぇんだろ?」

「ううっ」

「おい」


頬を両手で包まれ無理矢理視線を合わせると、永倉は頬を染める矢央を見て口許を緩めた。


こんなに愛しいものに出逢えるとは思っていなかった。

死んでも守ってみせると、朝焼けに誓う。



「この戦が終わったら、一緒に暮らすか」



二人とも生きていられる保証はどこにもない。

それでもこの言葉が力となって、どんな困難も乗り越えられるんじゃないかと思う。



「二人で静かに暮らすのも悪くねぇだろ」

「新八さんが大人しくしていられるとは思えないけどね」

「それは矢央もだろうが」

「えー、私はもう大人ですから大丈夫ですよー?」

「だったら、覚悟しとけよ?」


何を?と首を傾げれば、耳元に唇を寄せられ囁かれる。



「たんまり可愛がってやるから」

「………」

「もう大人ならいいだろ?俺、そんなに辛抱強く待てねぇから」


何となく意味を理解し、やっと治まっていた火照りがぶり返す。

ギッと睨んでやると、やけに色気のある笑みで見つめられ更に熱くて堪らなくなった。





永倉と本当に共に暮らせる日は来ないような気がする。

それはきっと永倉も同じだったが、二人を繋ぐ何かを残したかったのかもしれない。


いつか、本当にいつか共にいられたら、その時は………。