戦はまだ終わっていないというのに、見上げる空はとても美しい。

夜が明け始めた空は白や青や紫と色鮮やかで、澄んだ空気を吸い込むと少しだけ気持ちが晴れた。


 
「腕はどうだ?」

「もう大丈夫ですよ。まだ塞がりかけだけど」



人溜まりから少しだけ離れ永倉と二人空を見上げていた。

痛みに意識を失った矢央を片時も離れず意識を取り戻すまで傍にいた永倉は、笑顔を見せる矢央の頭を撫でる。


この感覚も随分久しぶりだ。



「新八さんに撫でられるの好きです」

「なんだよ急に」

「出会った頃から新八さんって何かあるたびこうして撫でてくれたでしょう?落ち着くんですよねーこれ」


頭の上に置かれた手に自ら撫でてとすり寄る矢央はまるで猫のようだと思った。


愛しさが込み上げ、こんな状況下で不謹慎にも思えたが矢央の肩を抱き寄せていた。


細く小さな身体を抱き締める腕に力が入る。



「悪かったな。守ってやるって大口叩いといて、結局怪我させちまってよ」

「あれは新八さんのせいじゃないよ。あの状態だと誰がいつ撃たれてもおかしくなかったから」


 
自分が傷を負い、そして沢山の仲間を失った永倉の心情こそ心配だった。


力無く微笑む顔に、いつもの生気が感じられない。



「死なせちまった仲間のためにも、へこんでらんねぇよな。お前もこんなとこに戻ってきちまうし、俺がいるってだけで後追っかけてくるし」


まだ弱ってられないよな。
と、矢央の肩に顔を埋める永倉。


「新選組が私の居場所だって言ったじゃないですか。それは今も変わらずです。
でも新八さんの傍にいたいって思ったから」


沖田に素直になればいいと言われた。

だからほんの少し素直になってみようと思えた。


「新八さんむちゃくちゃだから、傍にいて見張ってないと駄目だと思ったんです」

「言うねー」


クスクスと首筋に息がかかってくすぐったい。

身を捩ると、永倉が顔を覗き込んでくる。