救護所へやってくると負傷者でごった返状態だったが、矢央だけは直ぐに居場所がわかった。



「うあああっ!!」


痛みに喚く矢央の傍に駆け寄る。


「矢央しっかりしろ!状態はどうなんだ?」

「弾がまだ腕の中に残っとる。こいつの能力は傷は治せるみたいやけど、弾が残っとる状態やと無理みたいやから、今から弾を取るで」


山崎は持っていた手拭いを矢央に噛ませると、市村と永倉に暴れないように押さえるように言った。



「悪いが此処には痛みを和らげるもんなんかない。相当痛むやろうが耐えぇや」


グッと手拭いを噛んだ矢央は涙を浮かべながら頷く。



「くっ…ううぅぅううっっ!!」


ビクンビクンと身体が揺れる。
それを押さえる永倉も苦痛に顔を歪ませた。











「矢央の様態はどうなんだ?」

「命に別状はありません。弾を抜いた後、傷は塞がり始めたので大丈夫でしょう」

「そうか」



奉行所が炎に包まれたのは、永倉達が戻ってきて直ぐのことだった。

圧倒的な武力の違い幕軍は深夜退却を余儀なくされたのだ。




こうして長かった一夜が終わろうとしていた。



しかしこれはまだ始まりにすぎない。

戦はこの後更に酷くなっていくのである。