二人ともに困惑していた。
矢央が惚れてる男は総司ではないのか?
私が好きな人が総司さん?
「俺はてっきりお前は総司が好きなんだと…」
「総司さんのことは好きですよ?でも、それは土方さんとか原田さんとかと同じっていうか…」
言っているうちに恥ずかしくなり俯いた頬にソッと永倉の手が触れる。
ビクッと肩を揺らし、恐る恐る目線だけを上に上げると今までに見たことがない照れたような笑みを浮かべる永倉の顔があった。
「自惚れでもいい。お前が、矢央の惚れた男は…俺なのか?」
「…っっ」
頬に触れる掌から永倉の熱が伝わり、その手から自分の熱まで伝わっていそうで更に熱が籠もる。
「聞かせろよ」
そんな甘く囁かないでほしい。
この気持ちは伝えてはいけないものだ。
未来の人間と過去の人間が深く関わっていいはずがないことくらい分かってる……分かってるが、もう止められそうもない。
「す…き…です」
「ん」
「私…永倉さんが…大好きなんですっ」
言葉と共に止まっていた涙がボロボロと溢れ出す。
ぐいっと身体を引き寄せられ、逞しい腕の中にすっぽりと抱き締められていた。
「矢央、好きだ」
「っう~!私も、好きですっ」
言葉にするとたった二文字。
“好き”というたった二文字を伝えるのに、どれだけ時間をかけ、どれだけ迷ったのか。
互いにいつ相手を好きになったのか分からない。
気付けば意識し、気付けば好きになっていた。
「寒くねえか?」
寒くないよ、と首を振った。
永倉の腕の中が暖かくて胸に頬をすり寄せる。
こんなに安心できる場所が直ぐ傍にあったなんて。
「永倉さん」
「新八」
「新…八、さん?」
「ああ、なんだ?」
名前を呼んで、胸がキュンと鳴る。
想いが通じただけでこんなに幸せな気持ちになれるのか、とニヤニヤが止まらない。